コロナ禍で二度の延期と、
子どもの誕生
—— ようやく実現した結婚式が、
未来の娘への贈り物になる

YUUYA and NAOCO
Dialogue

ついにその日を迎える。

2022年6月、
裕也(ゆうや)さんと尚子(なおこ)さんが
CASOで結婚式を挙げられました。
延期後にお子さんが生まれ
家族のお披露目にもなった挙式は、
洗練された空間でありながらも
お二人の朗らかな人柄や
ゲストへの想いがあふれ出す
にぎやかであたたかい時間となりました。

そんなかけがえのない日を過ごされたお二人は、
「当初、結婚式はあまり乗り気じゃなかった」と
意外な言葉を口にしつつ、しかし今は
「式を挙げられて本当によかった」と語ります。
そこにはどんな気持ちの変化があったのでしょうか。

裕也さんと尚子さん、
そしてお子さんが暮らすご自宅にて、
結婚式の準備や、延期で変化した意識、
そして式を終えられて今思うことについて伺いました。

STORY 01

一つの集大成を、二人で作り上げる

——現在、裕也さんはアパレルのEC事業の運営をされ、尚子さんは情報誌の編集をされておられますが、ご自宅にいるときなどプライベートで見せる顔はお互いどんな印象を持たれていますか。

裕也さん(以下敬称略):僕はあまり社交性がなく生きてきたタイプですけど、尚ちゃん(尚子さん)は僕とは真反対で生粋の明るい人ですね。外でも明るいけど、家にいるときはもっとで、ずっとしゃべってるみたいな(笑)。

尚子さん(以下敬称略):そうかも(笑)。うっちー(裕也さん)はすごく楽しむことが上手な人だと思います。二人ともピクニックが好きで子どもが生まれる前はよく行ってたのですが、うっちーは「せっかくだからお弁当は買わずに作ろうかな」ってちゃんとこだわりたい性格というか。それで、うっちーの言う通りに一緒に準備すると想像以上に楽しいんです。「うっちーの言い出したことって一見大変そうだけど、それに乗っかると本当に面白いことが待ってる」ってうっちーの友だちも言ってて、本当にそういう人だと思います。

——裕也さんは自分で手を動かすのが好きなタイプなんですね。

裕也:結構そうですね。小さい頃からプラモデルを組み立てるのが好きで、それがエスカレートして小学生のときは自転車をバラして、また組み立ててみたりとか(笑)。

尚子:そんな人、なかなかいないですよね(笑)。

——だと思います(笑)。尚子さんはそんな裕也さんに影響された部分は大きいですか。

尚子:大きいですね。結婚式の準備は特にそうでしたね。

裕也:確かに、その最たるものというか(笑)。今まで自分でいろいろ作ってきましたけど、その一つの集大成を、二人で作り上げたような経験でした。



——集大成と言えるほどの式になったんですね。

尚子:でも実は私自身、最初は結婚式ってあまり乗り気じゃなかったんです。結婚式に夢が持てなかったというか。あらかじめプランが決まっていて「(A)(B)(C)のどれがいいですか?」って選ぶだけの印象が強くて、まわりからそういうのを聞いていたから、やる意味があるのかなって思っていたんです。

——たしかに一般的な結婚式は、式場のプランに沿った内容を選ぶという印象が強いかもしれません。

裕也:それもあって結婚式をやりたいってモードになれなかったというか。

尚子:でも入籍してしばらく経つと、まわりから「結婚式するの?」「しないの?」って言われることも多くなって、じゃあ、やってみようかなって。それで、今の住まいは東京ですが、二人とも大学が関西だったし地元の人も呼びやすいから関西の式場に絞って見学に行くことにしました。でも、まだ乗り気じゃなかったよね(笑)。

裕也:うんうん。それでもいろいろと調べて行くうちに、フリーランスのウエディングプランナーがいると知りました。僕たちは特段クセがある人間ではないけど、パッケージ化された感じは苦手だから、そうではなくもう少し自分たちの感覚とか好きなものに近くて、自由な雰囲気でできるところはないかなって。なんとなく目星を付けて5カ所くらいの式場を見学して、3人のプランナーさんにも会いに行きました。

——そのお一人が、お二人の式を手掛けられたウェディングプランナーの菅田(貴子)さんだったわけですね。

裕也:インスタで菅田さんご自身が挙げられた結婚式の写真を見つけて、「こういう式めっちゃいい!」って(笑)、それでメールをしたのが最初でした。そのときは、神戸にある式場がいいかなって話してはいたものの、100人くらいのゲストを想定していたので、そこだとちょっと入りきらないかも…ってことは悩みでした。そんなとき、僕が菅田さんに「現代アートみたいな雰囲気も入れたい」とぽろっと話したところ、「ぴったりの場所がありますよ」ってことでCASOを紹介していただきました。

——CASOは菅田さんが式を挙げられた場所でもありますよね。

裕也:自分たち“らしい”って言うとフワッとしてしまうけど、CASOならアートとかファッションとか、自分たちが好きなものをちゃんと表現できそうだなって思いました。あと二人とも音楽好きで、野外フェスの話題から尚ちゃんと付き合いはじめたこともあったので、式も野外っぽい雰囲気が出せたらとも思っていたのですが、挙式予定の3月の外はまだ寒いし悪天候の可能性もある。でもCASOなら工夫次第で室内でもそういう雰囲気を出せそうだし、100人のキャパでも全然問題ない広さなので、ここでやろうと決めました。

STORY 02

家族になり、音がさらに重なり合う

——挙式は2020年3月にCASOで行うことになりました。そこに向けて、お二人は「Harmonics / ハーモニクス」という式のテーマを決められます。

裕也:「こんな式がいいな」ってぼんやりとしたイメージしかないときに、菅田さんに「もう少しテーマ的なものがある方が準備を進めやすいし、式に来てくれるゲストもわかりやすい」と教えていただきました。「うーん、テーマか…」とあれこれ考えていたとき、たまたま聴いていた音楽がtoeの『Dual Harmonics』という曲でした。ハーモニクスには、単音の波長がいくつか重なりあって一つの音、和音になるという意味合いがあるのですが、この曲を聴いているうちに、僕と尚ちゃん、それぞれの人生が組み合わさって新しい音が響きはじめるようなイメージが浮かびました。その数カ月に子どもが生まれるタイミングだったので、新しい音がさらに重なり合って賑やかな家族になるのも式で表現できたらいいなって。それで尚ちゃんに「コンセプトはDual Harmonicsにしない?」って言ったら「Dualはいらん」って言われて、結果「Harmonics / ハーモニクス」になりました(笑)。

——(笑)。先ほど、裕也さんは「何でも作ってしまうようなタイプ」だと話されていましたが、式の準備は裕也さんがリードされていたのでしょうか。

裕也:どちらかというと、僕はお題をもらってそれをかたちにするのが得意なので、まずは尚ちゃんが案を出してくれるというか。

尚子:私が「〇〇があったらいいな」とか言うと、うっちーが作ってくれて。

——ゲストのみなさんがお食事するテーブルのセンタークロスも裕也さんが作られたと伺いました。

裕也:母が服飾関係の仕事をしていることもあり、たまたまミシンがあったので…。

尚子:あっても普通はできないですよね(笑)。だから準備する上では良い関係性だったかもしれません。

——そうやって着々と準備を進める一方で、その頃は新型コロナウイルスの影響が少しずつ出はじめた時期でした。

裕也:その頃は国内で1日100人くらいの感染者だったけど、まだまだ得体が知れないものだったので、その数字でも日本中が大変な時期でした。ただ緊急事態宣言も出てないタイミングだったから式をやれたかもしれないけど…。

尚子:ゲストに「こんなときに結婚式やるの?」って思われながらやるのもなってなったよね。

裕也:それで菅田さんと相談して式の1週間前に延期を決めました。そして、その3カ月後の6月に子ども(うた)が生まれました。

——それから世界中が本格的なコロナ禍に入るわけですが、お二人の式は再度延期を経て、2022年6月29日に挙げられることになります。

尚子:その日ってうたちゃんの誕生日なんです。コロナがいつ落ち着くのかもわからないけど、だらだら延期してても仕方ないので、うたちゃんの誕生日がきっかけになって「やっぱり、この日じゃないかな」って。

裕也:途中から「絶対にここでやるぞ」って意志みたいなものになっていましたね。

——当初の式予定日から2年後に開催が決まり、その間に無事にお子さんも生まれましたが、もともと予定していた結婚式から内容の変化ってありましたか。

裕也:結構変わった気がします。

尚子:延期後の式は「もっと、おもてなしをしたいね」って言ってたよね。

裕也: 2年前の式前って準備がギリギリだったこともあり、ゲストのことを考える余裕がなかったというか、とにかく間に合わせなきゃって焦っていました。でも延期期間中にゆっくりと考えられる時間がとれたので、ゲストへの思いとか細かいことにも気を配れたと思います。

STORY 03

真っ白な空間は、良くも悪くも自分たち次第だった

——CASOでの挙式に向けて準備を再開されたお二人ですが、CASOを見学されてどんな印象を持たれましたか。

裕也:思ってたよりめっちゃデカかったよね。

尚子:広すぎてどうしようって(笑)。あと、CASOって真っ白な空間だから良くも悪くも自分たち次第感がすごいじゃないですか。だから「ここで、やりきれるかな」っていう不安はありました。

裕也:そのときは、どの部屋の壁も装飾とか何かをしなきゃって思って、今思えば全然いらないような動画を流そうとしたりしていました(笑)。でも菅田さんと打ち合わせをしていくうちに、あれこれ詰め込まなくても、空間の余白を活かしながら、自分たちらしい式ができるんだって気が付きました。

——式当日、会場は自然を感じられる大胆なグリーンを用いたあしらいが印象的な空間でしたし、尚子さんがお好きなアンティークの家具を使用されたり、お二人それぞれのお仕事にかかわるものをディスプレイされたりと、各スペースやアイテムにはお二人の人となりや好きがさまざまな場所で表現されていました。席次表の「ゲスト・レコメンド」も面白い企画でした。

尚子:単なる席次だけではなくて、「人生を変えた本」とか「人生を変えた音楽」とか、事前にゲストから聞いた人生に影響を与えたものを載せました。自分たちの好きな人たちがどんなことに影響されたのかを知ってもらえるし、将来うたちゃんがこれを見たらすごく人生が豊かになるなっていう思いで作りました。

——尚子さんのドレスもオーダーメイドで作られたそうですね。

裕也:もともと僕の仕事の取引先で、尚ちゃんも好きなブランドのデザイナーさんに作っていただきました。「こんなドレスだったらいいよね」って会話から、「あのデザイナーさん作ってくれないかな」ってことで恐る恐る提案してみたら快諾いただけました。

尚子:デザイナーさんに「こういう感じがいい」とか「こういうパーツが欲しい」とか、たくさん要望をお渡しして、それをもとにデザイン画を描いてもらって。

裕也:一緒にレース屋さんに行ったりもしたよね。

尚子:でもレースが多すぎてどれがいいとか分からなくなったりして(笑)。普通のオーダーメイドだと、そんなところまではこだわれないってところまでこだわってもらえたので貴重な経験でした。しかも、そのドレスと同じ生地でうたちゃんのドレスを、パタンナーをされているうっちーのお姉さんに作っていただいたんです。

裕也:あとは母に引き出物用のバッグを作ってもらったり、そこに入っている刺繍を会社のスタッフの実家が刺繍工場だったのでやってもらったり。僕たちに関係する人たちを総動員しつつ、全投入して準備しました。

結婚式を経て、ようやく家族がはじまった

——コロナ禍による結婚式のため、お二人はゲストの安全を第一に考えられ、一部は家族や親族で、二部は友人を交えてと、当初の予定から変更されて二部制で挙げられました。二部制にしたことで内容や意識の変更はありましたか。

裕也:一部はうたちゃんの誕生日会がメインというか。僕らが何かをやるよりも、うたちゃんをお祝いする方が親も親族も盛り上がるという(笑)。まあ、うたちゃん本人も喜んでいたので、それはそれで面白かったですね。

尚子:うんうん。うたちゃんがいることで、より楽しい式になったと思います。

裕也:式に参加してくれた友だちが「家族になった姿をみんなの前で見せられたって、すごく意味があるよね」って言ってくれたんです。コロナ禍で子どもが生まれてもなかなかお披露目ができなかったから、本当に家族になったという感覚が薄かったというか。だから「家族になりました。これからもよろしくね」ってみんなの前で報告できたことは、すごく大切なことだったと感じています。

尚子:あと、コロナがいつ収まるかわからなくて結婚式を延期しないでやめちゃう人もいますけど、私たち二人にとっても式が区切りとなったいうか、そういう意識も芽生えた日でしたね。

——2年越しの結婚式になりましたが、この日はお二人にとってどんな日になりましたか。

尚子:本当にベタですけど、こんなに幸せな日があるんだって。

裕也:準備してきたものが本当に一つひとつ形になっているのが不思議な感じでもありましたし、目の前の光景を見て「ああ、長かったな。ようやくたどり着いたな」って。苦節10年のバンドが武道館に出るみたいな気分でした(笑)。

尚子:友だちが年賀状に「あんなに素敵な結婚式に行ったのは、はじめてだった」と書いてくれたり、他の友だちから「結婚式にあるものはどれも、二人がちゃんと選んだり触れたりしてることがわかった」って言ってくれたりして、そういう言葉を聞いて「ああ、自分たちが結婚式を作り上げられたんだな」って実感がよりわきました。よくよく振り返ると、うっちーの方が大変だったと思いますけど(笑)。

裕也:いやいや(笑)。手を動かすのは好きだし、少しでもいい式にしたかったから、つらさはなかったかな。ただCASOでの結婚式って自分たちで選択することが山ほどあるから、それはすごく大変な部分でもあったというか。でも、その都度「これって本当に必要なのかな?」って二人で結婚式というものの本質を考えながら準備できたのはよい経験になりました。

尚子:結果、意味のあるものだけで、式を作りあげられたのかなって。私自身、結婚式って全然興味がなかったけど、CASOという本当に素敵な場所で式が挙げられて、今はやってよかったと思います。うたちゃんが生まれたあとに挙式を迎えたことで、家族3人で一緒に祝えたこともうれしかったですし、うたちゃんもこの日のようにたくさんの笑顔があふれる結婚式を挙げてもらいたなっていう私たちからのメッセージというか、贈り物のような時間になっていたらうれしいですね。そう思えるのは、きっと私たちがこだわりを持って準備をしたから。たぶんパッケージ通りの式をでやっていたら、私はそこまでの気持ちにならなかったかもしれません。これだけ頑張ったから、本当にやってよかったなって。

裕也:それくらい頑張ったから、自信のようなものにもなりましたし。

——以前CASOで式を挙げられたお二人のインタビューをさせていただいたとき、新郎の方が「あの経験があったからこそ、これから何か困難なことがあっても乗り越えられる。そういう気持ちにさせてくれる日になった」と話されていました。

裕也:僕もその言葉と近いところがありますね。僕はクリエーションに全力投球ってタイプでもなく、普段から意識が高いわけでは全然ないんですけど、菅田さんをはじめ、いろいろな人にご協力をいただきながら、結婚式に向けてあれだけ頑張って、結果自分たちがいいと思うものでみんなに喜んでもらえた経験はすごく大きいですね。この経験が、今後の長い人生にジワジワ効いてきそうな気がしますね。

——挙式を終えられて、普段の生活に戻られたと思いますが、お休みの日はどんな一日を過ごされていますか。

裕也:以前は二人で料理をしたり、ピクニックをしたり、音楽を聴きに行ったりしていましたけど、うたちゃんが生まれてからは見ての通り(笑)、にぎやかに楽しく暮らしています。

尚子:朝起きたときに、うたちゃんが「大好き!」って言ってギュッてしてくれたりして、そんな毎日がとても幸せですね。

裕也:そうだね。日々こうして家族を実感する時間があるだけで幸せだなって感じます。そういう時間を大切にしながら、ここ数年はコロナ禍でいろんな人と会えない時間も長かったので、今後は両親とか友だちと、より頻度高く会える時間を増やしたいなと。よく久しぶりの友だちに会うと、わりと昔話ばかりになるとかありますよね。それも楽しいけど、これからは僕たち家族とみんなと一緒に、新しい思い出をたくさん作っていければと思っています。



Interview & Words: Hiroyuki Funayose
Interview Photo: Ayako Masunaga
Wedding Photo: Raita Kuwahara

WEDDING REPORT NAOCO&YUUYA&UTA Family wedding

2020年3月、本当だったらお腹の中にいる赤ちゃんと共に結婚式を挙げているはずだったお二人。結婚式の1週間前に延期を決めてから約2年、あの時お腹の中にいたUTA/うたちゃんが2歳のお誕生日を迎える当日に叶えられた3人での結婚式。